生まれてからずっと当たり前だったから、
星空を気にしたことは、あまりなかった。
ある島の人は、そう言った。
街灯などのない真っ暗な地上から見上げる、
まさしく零れ落ちそうな星たちは、
訪問者からすると、
それだけで十分な空の幸だ。
夏や秋に条件が整えば、上五島空港の
滑走路内で
絶景の星空観察ができる
「星空ナイトツアー」が
開催されたこともある。
星にまつわる、こんな話がある。
その昔、禁教令が発布され、
キリスト教徒が弾劾されていた時代のこと。
信仰深い潜伏キリシタンたちは、
十字架を持つことさえままならなかった。
しかし彼らは、ちょうどクリスマスの時期、
西の空に沈んでいく白鳥座を、
水平線に立つ十字架に見立てて、
密かに祈りを捧げていた、という。
この島には、星空にも
歴史の営みが織り込まれているのだ。